2026.05.22
2026年度5月度のくすり博物館懇話会の報告
中部支部
2026年5月度のくすり博物館懇話会は、5月21日(木)の午前中に開催されました。参加者は、10名で、以下の2つ発表と見学を行いました。
①名古屋市科学館特別展「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」の紹介(発表者:青木):
この特別展は、昨年11月から今年の2月まで上野の国立科学博物館で開催された内容です。地球史で、生物多様性が急激に失われた複数回の大量絶滅の中でも時に規模が大きい「ビッグファイブ」と呼ばれる5回の大量絶滅をテーマに、化石や岩石などの実物資料を通して生命進化の歴史を学べるものでした。それぞれの大絶滅の境界をエピソードとして展示ブースが構成され、オルドビス紀末の氷河化(P-T境界)、デボン紀後期の海洋無酸素化(F-F境界)、ペルム紀末の火山活動と環境崩壊による地球市最大の再絶滅(P-T境界)、三畳紀末の大規模火山活動(T-J境界)、そして白亜紀末の巨大隕石衝突による恐竜絶滅(K-Pg境界)など、それぞれ異なる原因による絶滅イベントがわかりやすく紹介されていました。また、大量絶滅は単なる「終わり」ではなく、その後に新しい生物群が繁栄する契機となったことも強調され、特に印象的だったのは、地球環境の急激な変化に対して生態系が極めて脆弱である一方、生命は何度も危機を乗り越えて進化してきたことを参加者の皆さんに伝え、共有しました。
②くすり博物館企画展(「くすりと医療のたどった道」—古代から江戸までの病との闘いー)の座学と展示見学(応対者:立松学芸員):
今回の企画展では、二年にわたり日本医薬史の通史に挑みました。初年度となる本展では、古代から江戸時代までの歴史を取り上げました。日本の医薬は、時代とともに大きく姿を変えてきました。古代から飛鳥時代前期には、動植物の薬効を経験的に学び、知識として蓄積する時代が続きます。飛鳥時代後半には文字文化の受容とともに中国医学が伝来し、奈良時代には律令制のもと内薬師・典薬寮が設置され、国家が医療に関与する体制が整いました。しかし平安時代に入ると、多くの疫病が流行したにもかかわらず、医療よりも陰陽師や僧侶の加持祈祷に頼る傾向が強まります。『源氏物語』にも多くの病人が登場しますが、呼ばれるのは医師ではなく僧侶でした。鎌倉・室町時代になると、外科を行う医師の需要が高まり、医療は再び実践的な方向へと転換します。江戸時代には、徳川家康は長寿が大切と学び、本草学書『本草綱目』や薬物書『(大平恵民)和財局方』を読んで体調管理に努めいていました。そのため、前期には漢方医学が隆盛を迎え、後期には杉田玄白が翻訳した『解体新書』以降オランダを介して西洋医学・薬学が流入し、天然痘に対するワクチン、コレラに対する予防法を示し幕府も蘭方医学の有効性を認めました。